水がないのになぜ「月の海」?命名の歴史と主要一覧の全真相を徹底解剖
水がないのになぜ「月の海」?命名の歴史と主要一覧の全真相を徹底解剖について分かりやすく解説いたします。専門家の見解をお届けします。
天文学の進歩によって解明された、月の海における玄武岩の成因は、太陽系初期の激烈な天体衝突史そのものです。月の海が白く輝く「高地」と異なり、なぜ黒々とした色合いをしているのか、その科学的プロセスは以下の2段階に要約されます。
第1段階は、約39億〜38億年前に起きたとされる「後期重爆撃期」です。巨大な小惑星や微惑星が原始の月に次々と衝突し、直径数百キロメートルから1,000キロメートルを超える巨大な衝突盆地(クレーター)を掘削しました。第2段階は、その数億年後に訪れました。衝突によって生じた地殻の割れ目から、月の内部マントルで放射性物質の崩壊熱などにより溶融した低粘性の玄武岩マグマが数億年にわたって繰り返し噴出したのです。極めてサラサラとした粘性の低い溶岩は、まるで地球の海の水のように盆地の底を平らに満たし、冷え固まって平坦な暗色の玄武岩層を形成しました。玄武岩には鉄やチタンなどの暗色鉱物が豊富に含まれるため、光の反射率(アルベド)が7〜10%程度と極めて低く、地球から見たときに黒い海のように浮かび上がります。
ここで多くの研究者を悩ませてきた最大の謎が、月の表側と裏側の決定的な違いです。私たちが地球から常に見ている「表側」は、表面積の約31%が広大な海で覆われています。ところが、探査機によって初めて撮影された「月の裏側」には海がわずか1〜2%しか存在せず、見渡す限りの白っぽいクレーター高地が広がっています。
この極端な非対称性の要因として、最新の研究では「地殻の厚みの差異」と「熱源元素の偏在」が挙げられています。地球の潮汐力や初期の熱史により、表側の地殻は平均30〜40キロメートルと比較的薄いのに対し、裏側の地殻は60〜80キロメートル以上と分厚い構造を持っています。さらに、ウランやトリウムといった放射性元素を含む「KREEP玄武岩」マグマの発生源が、表側の「嵐の大洋」周辺に極端に集中していたため、裏側ではマグマが地殻を突き破って表面まで到達できなかったのです。2024年に中国の探査機「嫦娥6号」が人類史上初めて月の裏側からのサンプルリターンに成功した際も、裏側の玄武岩サンプルの分析からこの地殻進化の非対称性を裏付けるデータが続々と報告されています。