『もののけ姫』に潜む官能の正体|宮崎駿が意図した大人向け裏設定
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『もののけ姫』における接触描写は、単なる扇情的なサービスカットとは決定的に異なります。宮崎駿監督が執拗にこだわったのは、「人間が生きるためのエネルギーと、性を内包した身体性のリアリズム」でした。
物語中盤、シシ神の森でアシタカが目を覚まし、サンに対して「生きろ、そなたは美しい」と言い放つ瞬間、サンは激しい動揺を見せて後ずさりします。人里離れた森で犬神(山犬)の娘として育ち、人間への激しい憎悪を剥き出しにしていたサンの内面に、「男から異性として見つめられた一人の思春期の少女」という無意識の覚醒が生じた決定的瞬間です。この精神的な動揺と肉体の緊張感こそが、観る者に息を呑むような艶めかしさを感じさせます。
さらに、主人公アシタカの心理描写も見逃せません。故郷のエミシの村を旅立つ際、許嫁同然の存在であった少女カヤから「永遠の愛の契り」として贈られた大切な形見【黒曜石(玉の小刀)】を、アシタカは後にサンへとあっさりと手渡してしまいます。
当時、プロデューサーの鈴木敏夫氏が「アシタカはとんでもない男ですよ」と苦言を呈したエピソードはスタジオ内で有名ですが、宮崎監督は「男とはそういう生き物である」「サンに出会った瞬間にアシタカの運命は塗り替えられた」と平然と返答したと記録されています。アシタカの行動に潜む身勝手とも言える男の業や、サンとの間に芽生える圧倒的な引力は、まさに大人向けのアニメーション映画だからこそ描かれたリアリズムの産物です。