自分の物を取り返すと犯罪?自力救済禁止の原則と家賃滞納トラブル

自分の物を取り返すと犯罪?自力救済禁止の原則と家賃滞納トラブルとはどんな影響があるのか? 専門的な分析を丁寧に紐解いて紹介します。

「自分の所有物を手元に戻すだけなのに、なぜ違法になるのか」という疑問は、法律の専門家でない限り誰もが抱く自然な感覚です。この疑問を解く鍵は、日本の民法が定める「所有権」と「占有権」の厳密な区別にあります。

民法上、たとえ正当な所有権を持たない泥棒や不法占拠者であっても、現にその物を事実上支配している状態(占有)そのものが「占有権」として法的に保護されます。もし国家が個人の実力行使を容認すれば、腕力や財力に勝る者が勝手に他人の領域へ踏み込み、実力で財産を奪い取る私闘(力による支配)が横行し、社会秩序が完全に崩壊してしまいます。そのため近代司法制度は、権利の確定と執行の権能をすべて裁判所と国家機関に独占させました。これが自力救済禁止の原則です。

驚くべきことに、自力救済禁止の原則に関する民法条文には、直接「自力救済をしてはならない」と明記した条項は存在しません。しかし、民法第202条が本権(所有権など)の訴えと占有の訴えを区別していることや、民事執行法という権利実現のための公的手続きが整備されていることから、法秩序全体の絶対的前提として確立しています。つまり、「正義の所在」を判定し実現する役割は国家にのみ委ねられており、個人が勝手に法を執行することは、いかなる正当な理由があっても許されないのです。

井上 凛

井上 凛

シニアコンテンツプロデューサー

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。

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