歌舞伎座を揺るがす名演の記憶――七代目・尾上菊五郎が魅せる「江戸の気風」と、令和の音羽屋が紡ぐ未来
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世話物の極致とも言われるその演技は、決して大げさな身振りに頼らない。洒脱で軽妙、それでいて深い哀愁を漂わせる立ち振る舞いは、音羽屋が代々磨き上げてきた宝物だ。『白浪五人男』の弁天小僧菊之助で見せる華やかさと毒気、『髪結新三』における江戸っ子の狡猾さと気風の良さ。彼の演じる人物たちは、画面や紙面からそのまま抜け出してきたかのような生々しい生活感をまとっている。
時代物は言うに及ばず、世話物において彼が醸し出す「江戸の空気感」は、現代の私たちが忘れかけた日常の機微や人情味を鮮やかに思い出させてくれる。言葉の語尾ひとつ、扇子の扱いひとつに到るまで洗練された美意識が貫かれており、見る者を一瞬で歌舞伎の世界へと引きずり込む力がある。