大河『江』上野樹里の演技批判が一転、熱烈再評価された理由
大河『江』上野樹里の演技批判が一転、熱烈再評価された理由に関する深掘り解説を分かりやすく解説いたします。
放送当初の猛反発を跳ね返し、視聴者の心を揺さぶるまでに評価が反転した最大の理由は、「主人公の成長曲線と上野樹里自身の覚醒」にありました。
第1回から第10回付近で見せた天真爛漫すぎる少女像は、過酷な戦国乱世を生き延びる過程で訪れる喪失と絶望を際立たせるための「周到な助走」でした。二度の落城によって実父・浅井長政と養父・柴田勝家を失い、母・お市(鈴木保奈美)とも死別。さらに三度の輿入れを強いられるという、江の壮絶な宿命が本格化するにつれ、上野の演技からは甘さが完全に削ぎ落とされていきました。
特に視聴者の眼差しを決定的に変えたのは、以下の3つのターニングポイントです。
第一に、「失意と孤独を呑み込む無言の表情」です。豊臣秀勝(AKIRA)との短い婚姻と死別、そして娘・完との引き離しという悲哀を演じた際、上野が見せた眼光の鋭さと瞳に溜めた涙は、それまでの批判的な視聴者を黙らせる圧倒的な情感を宿していました。
第二に、「徳川の御台所、そして大奥の礎としての風格」です。第23回で向井理演じる徳川秀忠と結ばれて以降、ドラマは戦国の武勇伝から「泰平の世を築く家族の葛藤」へとテーマをシフトさせます。わが子を徳川家の世継ぎとして育てる葛藤、春日局(富田靖子)との激しい対立、そして晩年の威厳ある所作に至るまで、上野は20代半ばでありながら老境の貫禄を完璧に体現してみせました。
第三に、近年の大河ドラマにおける「戦国女性史観」の定着です。2010年代以降、大河ドラマは従来の合戦絵巻だけでなく、後方支援や家を守る女性たちの視点を重んじる傾向が強まりました。『江』が当時果敢に挑戦した「戦国ホームドラマ」という構図は、時代が下るにつれて「先駆的かつ普遍的な視点だった」と見直されることになったのです。