膵液について正しいのはどれか?国試頻出の落とし穴と完全攻略まとめ

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膵液に含まれるタンパク質分解酵素群には、人体が進化の過程で獲得した厳重極まりない安全装置が組み込まれています。ここを深く掘り下げることで、試験問題の解答にとどまらず、臨床現場における「急性膵炎」の病態理解へとシームレスに知識をつなげることができます。

タンパク質分解の切り込み隊長であるトリプシンは、膵臓の腺房細胞内では活性を持たないトリプシノーゲンという前駆体ペプチドの状態で合成・貯蔵されます。さらに腺房細胞内には、万が一微量のトリプシンが生じてしまった場合に備えて膵トリプシンインヒビター(PSTI)という阻害物質が同居しており、二重の安全ロックが掛けられています。

このロックが解除されるのは、十二指腸内へ注ぎ出された瞬間です。十二指腸粘膜の微絨毛に局在する酵素エンテロキナーゼ(エンテロペプチダーゼ)が、トリプシノーゲンのペプチド鎖の一部を切り落とす(限定水解)ことで、初めて攻撃力を持った活性型トリプシンへと変換されます。そして一度トリプシンが誕生すると、それが触媒となって仲間のトリプシノーゲンを次々と活性化させると同時に、キモトリプシノーゲンをキモトリプシンへ、プロエラスターゼをエラスターゼへ、プロカルボキシペプチダーゼをカルボキシペプチダーゼへと連鎖的に覚醒させていきます。

このカスケード反応がもし膵臓内部でフライングを起こしてしまった状態、それがまさに急性膵炎です。胆石がファーター乳頭部に嵌頓して膵液が逆流したり、大量のアルコール摂取によって膵管内圧が上昇・粘液栓が生じたりすると、膵組織内でトリプシンが活性化してしまいます。結果として自身の膵実質や周囲の脂肪組織を激しく溶かし尽くし、耐え難い激痛や多臓器不全を招くことになります。「なぜトリプシノーゲンとして分泌されるのか」という問いの背景には、生体を自己消化の危機から守るための絶対的な防衛原則が存在しているのです。

井上 凛

井上 凛

シニアコンテンツプロデューサー

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。

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