除細動器とは?Aedとの違いや電気ショックの仕組み・命を救う全知識
除細動器とは?Aedとの違いや電気ショックの仕組み・命を救う全知識に関する疑問を徹底的にまとめました。最新データをご覧ください。
テレビドラマや映画の影響から、一般社会には根強い誤解が存在します。「電気ショックは、止まってしまった心臓に活を入れて再び動かすための刺激装置である」という認識です。しかし、救命医療の観点から見れば、この認識は生理学的に正反対の誤りと言わざるを得ません。
除細動器が適応となる代表的な病態は、心室細動(VF:Ventricular Fibrillation)および無脈性心室頻拍(pVT:pulseless Ventricular Tachycardia)と呼ばれる致死性不整脈です。心室細動に陥った心臓は、完全に止まっているのではなく、1分間に数百回もの微細かつ無秩序な電気信号が心筋を駆け巡り、まるで小刻みに震えるゼリーのように痙攣しています。ポンプとしての協調運動が完全に破綻しているため、脳や全身に血液が一切送り出されず、発症から数秒で意識を失い、放置すれば死に至ります。
電気ショックが果たす本当の役割は、心臓の再始動ではなく「心筋全体の完全なリセット」です。瞬間的に数千ボルト、約150〜200ジュール(二相性波形の場合)の強力な電流を心臓全体に貫通させることで、バラバラに興奮していた心筋細胞を一斉に「脱分極」させ、電気的活動を強制的にゼロへと同期させます。つまり、異常な暴走を一度強制終了させるのです。
異常な痙攣がリセットされると、心臓本来のペースメーカーである「洞結節(どうけっせつ)」が再び主導権を取り戻し、規則正しい固有の電気信号を発信し始めます。これが、除細動によって心臓が自律的な拍動を取り戻す生理学的理由です。したがって、心電図が完全に平坦になって心筋の電気活動が消失した「心静止(Asystole)」の状態に対しては、除細動器は一切適応になりません。電気ショックを与える対象となる無秩序な電気が存在しないため、機械も「ショックは不要です」とアナウンスします。この場合に必要なのは、胸骨圧迫とアドレナリン投与による循環の維持です。