大村智とイベルメクチン|土壌の微生物が世界を救った奇跡の真相
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イベルメクチンの起源は、1974年に静岡県伊東市の川奈ゴルフ場近くで採取された土壌サンプルに遡ります。大村博士は常に小さなポリ袋とスプーンを持ち歩き、出張先や移動中の至る所で土を採取していました。研究室に持ち帰った土壌から単離された無数の微生物の中に、後に世界を変える新種の放線菌「ストレプトマイセス・アベルメクチニウス(Streptomyces avermectinius)」が存在していたのです。
大村博士率いる北里研究所のチームは、微生物が分泌する化合物を効率的に評価する独自のスクリーニング系を確立していました。そこで強い抗寄生虫活性を示す物質「アベルメクチン」を発見し、国際的な産学連携パートナーであった米大手製薬会社メルク社(Merck)へサンプルを送付します。
メルク社のウィリアム・キャンベル博士らの研究陣は、このアベルメクチンの化学構造を一部改変し、毒性を抑えつつ安全性を高めた誘導体「イベルメクチン」の合成に成功しました。当初は家畜用の抗寄生虫薬として爆発的なヒットを記録し、その後、ヒト用医薬品としての臨床試験を経て劇的な効果が実証されたのです。自然界の微生物の力を信じ、執念深く土壌と向き合い続けた大村博士の慧眼が、奇跡の創薬への扉を開きました。