乱歩『芋虫』なぜ発禁に?トラウマ級のあらすじと結末の真相を徹底考察
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物語の舞台は、世間から隔絶された静かな邸宅の一室。日露戦争の激戦で両手両足を切断され、聴覚と声を失った須永中尉は、世間から「生ける軍神」として称賛されながらも、実質的には畳の上を転がるだけの肉塊と化していました。彼に残された感覚は、わずかな視覚と皮膚感覚、そして旺盛な食欲と性欲だけでした。言葉による意思疎通は不可能で、妻である時子の胸の上に頭文字を指や顔でなぞるか、身もだえする動作だけで感情を伝達します。
夫の介護を一身に背負う妻の時子は、献身的な妻としての顔を保ちながらも、次第に精神の均衡を崩していきます。健常者であった頃には傲慢だった夫が、今や自分の掌の上でしか生きられない無力な存在であるという現実に、歪んだ加虐趣味(サディズム)と支配欲を芽生えさせていくのです。
二人の関係は、看護と介護という日常の枠組みを完全に逸脱します。時子は夫を弄び、肉体的な苦痛や精神的な屈辱を与え、その反応を観察することに背徳的な快楽を見出します。一方で須永中尉もまた、時子の暴力と情念に恐怖しながらも、彼女なしでは自らの欲求を満たせないという絶対的な従属関係に堕ちていきます。昭和初期の日本を席巻した「エログロナンセンス」の極致とも呼べる、息の詰まる密室劇が展開されます。