鉄筋かぶり厚さ不足が招く倒壊危機|建築基準法とJass5の真相
鉄筋かぶり厚さ不足が招く倒壊危機|建築基準法とJass5の真相の基本情報から最新動向までを一挙に解説しました。
かぶり厚さを設計通りに確保するための唯一無二の命綱が、鉄筋と型枠の間に挟み込む「スペーサー」です。しかし、このスペーサーの選定ミスや配置ピッチの不足が、現場における最大の欠陥要因となっています。
基礎やスラブ、梁などの部位によって使用すべきスペーサーは厳格に決まっています。基礎の耐圧盤(ベース)にはコンクリート製のサイコロ型スペーサー、梁や柱の側面には円形のプラスチック製ドーナツスペーサーが用いられます。日本建築学会の標準仕様書に基づくスペーサーブロック適正配置基準では、以下のような過密とも思える配置が要求されます。
- 基礎立ち上がり部・壁:縦横ともに1m以内の間隔で、1平方メートルあたり2個程度。端部や開口部周囲は300mm以内に配置。
- スラブ(床版):上筋・下筋ともに1平方メートルあたり約1〜1.3個(ピッチ0.9m〜1m程度)。作業員の歩行荷重で鉄筋が下がらないよう強固に支持。
- 梁・柱:主筋の長手方向に1.5m〜2m程度の間隔で、断面全周に配置。
現場で多発する致命的なトラブルが、コスト削減のためにスペーサーの個数を半分近くに間引く行為です。支持点が足りないスラブ鉄筋の上を生コン打設の作業員が長靴で踏み荒らせば、鉄筋網は中央に向かって数センチも沈降します。打設が完了したときには、スラブ上面のかぶり厚さが異常に厚くなる一方で、下側のかぶり厚さがほぼゼロになり、型枠を脱型した瞬間に天井面に鉄筋が露出する事態を引き起こします。
万が一、型枠解体後に鉄筋の露出や著しいかぶり厚さ不足が発覚した場合、現場では「鉄筋露出補修の対策と経緯」の記録が義務付けられます。露出部位の周囲をハツリ落として鉄筋の全周に20mm以上の空隙を確保し、防錆剤を塗布した上でポリマーセメントモルタルを充填する「断面修復工法」が標準的な補修手順です。しかし、後から塗り重ねたモルタルは母材コンクリートとの間に打継ぎ界面が残り、熱膨張率の違いや地震の層間変形によって将来的に剥落するリスクを完全にゼロにはできません。最初から適正なかぶり厚さを確保して打設することに比べ、後施工の補修はあくまで応急処置に過ぎないのが現実です。