高齢者の尿路感染症が命を奪う真相|熱なき急変と敗血症を防ぐ鉄則
高齢者の尿路感染症が命を奪う真相|熱なき急変と敗血症を防ぐ鉄則に関する最新の話題を分かりやすく解説いたします。
高齢者の尿路感染症が短時間で致死的な経過をたどる背景には、感染が局所に留まらず全身へ波及する「尿路性敗血症(ウロセプシス)」の存在があります。大腸菌などのグラム陰性桿菌をはじめとする細菌が尿道から膀胱、尿管を逆行して腎臓に到達し、腎盂腎炎を発症。そこから毛細血管へと菌が入り込み、菌血症から敗血症へとドミノ倒しのように悪化していくのが典型的な病態です。
なぜ高齢者においてこれほど急激に進行するのか、その理由は主に3つの身体的要因に集約されます。
第1に、免疫老化(Immunosenescence)による生体防御反応の低下です。好中球の貪食能やT細胞の機能が著しく衰えているため、細菌の増殖を水際で食い止めることができません。第2に、下部尿路の機能障害です。前立腺肥大症や神経因性膀胱、骨盤臓器脱などによって常に尿が膀胱内に残る「残尿」が生じ、細菌にとって格好の培養基となってしまいます。そして第3に、多臓器の予備能低下です。動脈硬化や慢性腎臓病(CKD)、糖尿病などの基礎疾患を抱える身体に全身性炎症反応が起きると、血管透過性が亢進して急激な血圧低下を招き、敗血症性ショックから多臓器不全へと一気に傾斜します。
国内外の救急医療データによると、全身に炎症が波及した敗血症性ショック状態に陥った場合の高齢者の尿路感染症における死亡率は20〜40%前後に達すると報告されており、早期の抗菌薬投与と全身管理がなされなければ、発症から24〜48時間以内に心停止を招く現実が存在します。