神は細部に宿るは誰の言葉か?ミース説の真相と悪魔との決定的な違い
神は細部に宿るは誰の言葉か?ミース説の真相と悪魔との決定的な違いについて知っておくべき 事実を分かりやすい構成で解説いたします。
「神は細部に宿る 誰の言葉なのか?」という疑問に対し、最も広く知られている答えは、20世紀のモダニズム建築を代表するドイツ出身の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)です。鉄とガラスを用いたミニマルな建築を追求した彼は、「Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」とともに、"God is in the details"(ドイツ語:Der liebe Gott steckt im Detail)という表現を自らの設計哲学として掲げました。装飾を極限まで削ぎ落とすからこそ、鉄骨の接合部(ジョイント)の納まりやガラスの割り付けといった極小のディテールに寸分の狂いも許されないという、建築の構造美を突いた言葉です。
しかし、図書館のレファレンス記録や思想史の文献を丹念に辿ると、ミース自身がこの言葉を一から創作したわけではないことが判明しています。「神は細部に宿る 由来」には、主に3つの有力な源流が存在します。
第一に挙げられるのが、19世紀フランスを代表する文豪ギュスターヴ・フロベール(Gustave Flaubert)の書簡です。代表作『ボヴァリー夫人』の執筆時、完璧なリアリズムと推敲に病的なまでの情念を注ぎ込んだフロベールは、「Le bon Dieu est dans le détail(親切な神は細部に宿る)」と書き残しています。登場人物の心理描写や情景の一語一句に至るまで、妥協のない言葉の選定が文学作品全体のリアリティを決定づけるという文学的信念の表れでした。
第二の源流は、ドイツの美術史家アビ・ヴァールブルク(Aby Warburg)です。彼は自ら創設した文化科学研究所のモットーとしてこの格言を掲げ、古代からルネサンスへと継承される記憶の残像を、絵画の片隅に描かれた衣装の襞(ひだ)や装身具といった極小の表現から解読しようと試みました。美術史の現場では「ヴァールブルクの言葉」として定着しています。
言葉の系譜を整理すると、19世紀のヨーロッパに存在していたことわざ的な言い回しをフロベールやヴァールブルクが引き継ぎ、それを20世紀半ばにミース・ファン・デル・ローエが英語圏のメディアインタビューを通じて建築哲学として発信したことで、世界的な標語として広まったというのが歴史的事実と言えます。