九龍城砦に住んでいた人の現在|魔窟の生活実態と立ち退きの真相

九龍城砦に住んでいた人の現在|魔窟の生活実態と立ち退きの真相にまつわる興味深い視点を詳しく紐解きます。

九龍城砦の内部構造と間取りは、まさに迷宮そのものでした。建築家や測量士の手を借りずに増改築が繰り返された結果、建物の隙間は数センチ単位まで埋まり、1階から上層階まで太陽の光が一切届かない暗黒の路地が形成されていました。路地の頭上には無数の違法配管や電線が蜘蛛の巣のように張り巡らされ、常に上層階からの水漏れが滴っていたため、傘を差して歩くのが日常茶飯事でした。

当時の生活実態について、元住民やドキュメンタリー取材班が残した証言からは、過酷な物理環境とは裏腹な人間味溢れる生活が浮かび上がります。

「昼間でも真っ暗で、部屋の中では24時間蛍光灯をつけっぱなしにしていた。水道は城砦内にわずか数カ所しかなかった共同水汲み場から毎日家族総出で運ぶ重労働。それでも、鍵をかけずに外出しても隣人が子どもの面倒を見てくれたし、夕飯のおかずを分け合うのが当たり前だった」――元住民の男性は回顧録でこう語っています。

また、砦内には数百軒に及ぶ工場が存在し、香港中のレストランに卸す魚肉団子(フィッシュボール)やチャーシュー、プラスチック製品、衣料品などが製造されていました。衛生管理の基準外だったものの、安価で良質な製品の供給源として香港全体の経済活動を底辺から支えていた側面も見逃せません。さらに、中国本土で免許を取得した医師や歯科医が無認可で格安診療を行っており、砦の外からも多くの一般庶民が治療を受けに訪れていました。

1980年代後半から解体直前にかけては、日本人探検家や建築家、ジャーナリストたちによる潜入取材も活発に行われました。建築学者のチームが城砦内の詳細な実測断面図(パノラマ断面パース)を作成したほか、写真家の宮本隆司氏らが捉えた高解像度の内部写真は、失われた立体迷都の貴重な歴史的遺産として今も世界中で高く評価されています。

斉藤 蓮

斉藤 蓮

デジタルマーケティングコンサルタント

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。

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