てっさの食べ方とマナーの真相|何枚すくう?職人が教える粋な作法と極意
てっさの食べ方とマナーの真相|何枚すくう?職人が教える粋な作法と極意についての最新情報をご紹介します。
白身魚の刺身といえば、鯛や平目のようにある程度の厚みを持たせて切るのが一般的です。しかし、なぜふぐ刺しだけが向こう側の絵柄が透けて見えるほどの薄切りにされるのでしょうか。
最大の理由は、とらふぐの筋肉組織の特異な硬さにあります。ふぐは他の魚のように体を大きくくねらせて泳ぐのではなく、胸びれと尾びれを細かく動かして泳ぎます。そのため筋肉繊維が極めて緻密で、ゼラチン質(コラーゲン)が凝縮されており、魚類の中でも圧倒的な弾力を持っています。もし通常の刺身のように3〜5ミリの厚さで切ってしまうと、ゴムのように硬くて噛み切ることができません。
職人は「フグ引き包丁」と呼ばれる刃身が薄く細長い専用包丁を使い、わずか1ミリ前後の極薄に引き切ります。この薄切りによって、心地よいコリコリとした歯ごたえと、舌の上でほどけるような食感が生まれるのです。
また、薄切りにすることで可能になるのが、日本の伝統美を体現した芸術的な盛り付けです。
- 菊盛り(きくもり):皿の外側から中心に向かって大輪の菊の花が咲き誇るように円状に並べる最も代表的な技法。
- 鶴盛り(つるもり):鶴が羽を広げて羽ばたく姿を模した、婚礼や祝いの席に欠かせない格調高い盛り付け。
- 孔雀盛り・牡丹盛り:孔雀が羽を広げた優美な姿や、大輪の牡丹を表現した高度な職人技。
なお、関西でふぐ刺しを「てっさ」と呼ぶ由来・語源は、江戸時代の歴史に遡ります。当時、ふぐは毒にあたると命を落とすことから「鉄砲(当たると死ぬ)」と隠語で呼ばれていました。「鉄砲の刺身」を略して「てっさ」、鍋料理を「鉄のちり鍋」から「てっちり」と呼ぶようになったのが始まりです。