ムスカ大佐から特撮まで:名優・寺田農が遺した圧巻の芝居人生
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寺田の芝居の原点を辿る上で外せないのが、演劇界の登竜門である文学座での修行時代と、鬼才・岡本喜八監督との出会いである。1968年の主演映画『肉弾』で彼が見せた姿は、まさに日本映画史に残る怪演だった。
戦争という不条理な濁流に呑み込まれながら、ドラム缶で漂流する青年「あいつ」。その滑稽でありながら痛切な生のエネルギーを見事に体現し、毎日映画コンクール男優主演賞を受賞した。戦争の愚かしさと人間の生への執着を、全身全霊でスクリーンに叩きつけたこの作品は、彼が映画業界で確固たる地位を築く決定打となった。
文学座で鍛え上げられた確かな発声と身体表現、そして岡本作品特有のテンポ感が見事に噛み合った瞬間であった。型にはまらない柔軟性と、一瞬で役柄の闇を提示する表現力は、この若き日の傑作において既に完成されていたと言える。