赤子にはちみつはなぜダメか?乳児ボツリヌス症の脅威と命を守る全知識

赤子にはちみつはなぜダメか?乳児ボツリヌス症の脅威と命を守る全知識の疑問点について、分かりやすい解説を取りまとめてご紹介します。

乳児にはちみつが絶対NGとされる最大の理由は、乳児ボツリヌス症を発症させるリスクにあります。これは、土壌や河川など自然界に広く生息する「ボツリヌス菌」が体内に入ることで引き起こされる感染症の一種です。大人がはちみつを食べても何の異常も起きないのに対し、1歳未満の乳児だけが生命の危機に瀕してしまうのには、明確な医学的根拠が存在します。

ボツリヌス菌は厳しい環境下におかれると、「芽胞(がほう)」と呼ばれる極めて頑丈な殻のような休眠状態を形成します。大人の体内に入った場合、胃酸や十分に発達した腸内細菌叢(腸内フローラ)の働きによって、この芽胞が発芽・増殖することはありません。そのまま便と一緒に体外へと排出されます。

ところが、生後間もない赤ちゃんの腸内環境はまだ非常に未熟です。消化酵素や胃酸の分泌が弱く、腸内細菌叢のバランスも確立されていません。この無防備な消化管内にボツリヌス菌の芽胞が入り込むと、菌は腸内で一気に発芽し、爆発的に増殖しながら自然界最強クラスとされる神経毒素(ボツリヌス毒素)を産生します。毒素が体内に吸収されると、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出が阻害され、全身の筋肉が麻痺していくのです。

厚生労働省の公式発表資料によると、日本では1987年10月に当時の厚生省から全国へ注意喚起の通知が出されました。しかしその後も誤認や無理解による事故は後を絶たず、2017年3月には東京都足立区で、離乳食としてはちみつを与えられていた生後6ヶ月の男児が乳児ボツリヌス症で死亡するという痛ましい事案が発生しました。国内で乳児ボツリヌス症による死亡例が公的に確認されたのはこれが初めてであり、育児現場に強い衝撃を与えました。この事実が示す通り、「少し舐めさせただけ」という油断が、不可逆的な事態を招きかねないのです。

橋本 菜々子

橋本 菜々子

トレンドリサーチャー

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest