風邪に抗生物質が出ないのはなぜ?効かない理由と最新の医療常識
風邪に抗生物質が出ないのはなぜ?効かない理由と最新の医療常識の真相や最新動向に迫る! わかりやすい言葉でまとめました。
昭和から平成の初頭にかけては、医療機関を受診すると「念のため」「二次感染予防のため」という名目で風邪に抗生物質が処方されるケースが頻繁に見られました。しかし、現在の医療現場ではその常識が大きく覆っています。
転換点となったのは、厚生労働省が策定した『抗微生物薬適正使用の手引き』や、日本感染症学会をはじめとする関連学会の急性上気道炎に対する抗菌薬適正使用ガイドラインの徹底です。国内外の膨大な臨床研究データによって、「風邪に対する抗生物質の予防的投与は、二次感染の予防にも治癒期間の短縮にも寄与しない」というエビデンスが確立されました。
医療界が処方を厳格化した背景には、世界規模で危機感が高まる薬剤耐性菌(AMR:Antimicrobial Resistance)対策があります。抗生物質を不必要・不適切に使用し続けると、体内の細菌が変異し、その薬に対して抵抗力を持つ「耐性菌」が誕生します。
世界保健機関(WHO)の報告や関連研究データでも、このままAMR対策が進まなければ、2050年には耐性菌感染症による世界の年間死亡者数が1,000万人規模に達し、がんによる死亡者数を上回ると警告されています。本来は抗生物質が不要な風邪に対して漫然と投与することをやめる取り組みは、将来自分が肺炎や重篤な感染症にかかった際、治療薬が効かなくなる事態を防ぐための必須防衛策です。