ネロが切望したルーベンスの絵の衝撃真相!日本で見られる名作を徹底解説
ネロが切望したルーベンスの絵の衝撃真相!日本で見られる名作を徹底解説にまつわる興味深い視点を分かりやすく発信ます。
アニメ『フランダースの犬』のクライマックスで、息も絶え絶えのネロが「パトラッシュ、僕はずっとこれが見たかったんだ……マリア様、ありがとうございます。これだけで、もう僕は何もいりません」と呟きながら見つめた作品。それはベルギーのアントワープ(アントウェルペン)にある聖母マリアを祀るアントワープ大聖堂(ノートルダム大聖堂)に納められた、ルーベンスの代表的な三連祭壇画『キリスト降架(The Descent from the Cross)』、そして対をなす『キリスト昇架(The Elevation of the Cross)』です。
物語の中でネロがこれらの絵を観ることができなかった理由は、単に大聖堂が遠かったからではありません。当時、これらの祭壇画の前には分厚いカーテンが掛けられており、「銀貨1枚」を教会に支払わなければカーテンを開けてもらえなかったという厳然たる史実に基づいています。身寄りをなくし、その日のパンにも事欠いていた貧しい少年ネロにとって、銀貨1枚は途方もない大金でした。誰からも顧みられず、社会から完全に弾き出された少年が、死の直前に風で偶然めくれたカーテンの隙間、あるいは月光に照らされた名画を目にして魂の平穏を得るという展開は、19世紀の原作者ウィーダ(Ouida)が当時の冷酷な階級社会と貧困への告発として描いた痛烈な描写でした。
なお、祭壇の中央奥にはもう一枚、名高い『聖母被昇天』が掲げられています。聖母マリアが天使たちに導かれて天へと昇っていくこの光景こそが、息を引き取ったネロとパトラッシュが天使たちに抱えられて昇天していく名シーンの直接的なモチーフとなりました。ルーベンスが描いた生と死、苦痛と救済のドラマは、まさにネロ自身の短い生涯の軌跡と残酷なまでに美しく呼応していたのです。