ウイングス黄金期『ビーナス・アンド・マーズ』が名盤と呼ばれる理由
ウイングス黄金期『ビーナス・アンド・マーズ』が名盤と呼ばれる理由の全体像を分かりやすくまとめてご紹介します。
ウイングスの歴史を語る上で避けて通れないのが、前作『バンド・オン・ザ・ラン』との対比です。前作はメンバーの脱退劇に見舞われ、ナイジェリア・ラゴスでポール、リンダ・マッカートニー、デニー・レインのわずか3人のみで録音を強いられた、いわば「ポールの超人的な孤軍奮闘」によって生み出された奇跡の作品でした。
対して『ビーナス・アンド・マーズ』は、ギタリストに若き神童ジミー・マカロック、ドラマーに確かなテクニックを誇るジョー・イングリッシュ(初期セッションはジェフ・ブリトン)を迎え入れた「完全な5人組バンド」として制作されています。
前作にあった切迫感やシャープな緊張感に対し、本作には強固なラインナップによる重厚なアンサンブルと、スタジアムを意識したスケールの大きな音作りが際立ちます。ポール一人に依存しないバンドとしての一体感と余裕が、作品全体に豊かなダイナミズムと華やかさをもたらしたのです。