残気量とは?息を吐ききっても残る空気の正体と異常値が示す疾患リスク
残気量とは?息を吐ききっても残る空気の正体と異常値が示す疾患リスクについての疑問解決ガイドを徹底解説します。
胸を限界までへこませ、これ以上は1ミリリットルも吐けないという極限状態まで息を吐き出しても、人間の肺の中には一定量の空気が頑として残ります。この取り残された空気の容積こそが残気量(Residual Volume: RV)です。
「なぜ肺を完全に空っぽにできないのか」と不思議に思うかもしれません。しかし、もし残気量がゼロになり、肺の中の空気が完全に抜け落ちたらどうなるでしょうか。肺の末梢にある無数の小さな袋「肺胞」の内壁同士がぺったりと張り付き、ペシャンコに潰れてしまいます。これがいわゆる「無気肺」と呼ばれる状態です。
一度完全に潰れて密着した風船を再び膨らませるには、最初のひと吹きに並外れた強い力が必要です。肺胞も同様で、完全に虚脱してしまうと、次の吸気時に肺を押し広げるために莫大な呼吸筋のエネルギーを消費してしまい、人間は呼吸をするだけで極度の疲労に陥ります。肺胞内に分泌される肺サーファクタント(表面活性物質)の働きとともに、適度な残気量がクッションとして肺内に留まり続けることで、私たちは余計な力を込めることなく、滑らかに次の息を吸い込むことができるのです。つまり残気量は、息が途切れた瞬間でも血液への酸素供給を維持し、呼吸器の破綻を防ぐために備わった必須の生命維持システムといえます。
この肺の容量関係を整理した概念が肺気量分画です。呼吸運動によって出入りする空気の量はいくつかのブロックに分かれており、その全体像を把握することで肺の構造が見えてきます。代表的な構成要素と計算式の関係は次の通りです。
- 全肺気量(Total Lung Capacity: TLC):限界まで息を吸い込んだときに肺内にあるすべての空気量。
【計算式】全肺気量(TLC)= 肺活量(VC)+ 残気量(RV) - 機能的残気量(Functional Residual Capacity: FRC):安静時に普通の息を吐き終わった時点で肺に残っている空気量。
【計算式】機能的残気量(FRC)= 予備呼気量(ERV)+ 残気量(RV) - 残気率(RV/TLC比):全肺気量の中に残気量が占める割合。
【計算式】残気率(%)= 残気量(RV)÷ 全肺気量(TLC)× 100
息を吸ったり吐いたりできる「動的な領域(肺活量)」と、決して吐き出せない「静的な領域(残気量)」が合わさることで、私たちの肺全体のキャパシティ(全肺気量)が形作られています。