教科書から消えた源頼朝の肖像画|国宝に隠された世紀の真相とは

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「この男は、本当に源頼朝なのか?」――美術史家・黒田日出男氏らが突きつけた疑問は、日本の歴史学界に激震を走らせた。かつて全国の小中学校で「源頼朝の姿」として教え込まれていたあの絵画は、現在ではほぼすべての教科書で「伝源頼朝像」と注記されている。名前に「伝」がついたことの意味は重い。つまり、公式な学術的知見として「源頼朝ではない可能性が極めて高い」と認められたのだ。

では、あの肖像画に描かれた人物の正体は一体誰なのか。有力視されているのが、南北朝時代の争乱を駆け抜けた室町幕府の副将軍、足利直義である。1990年代後半に提示されたこの「足利直義説」は、当時の装束の形式や刀の形状、そして絹の織り方に至るまで徹底的な時代考証が行われた結果生まれたものだ。鎌倉幕府を開いた12世紀末の人物にしては、あまりにも14世紀半ばの南北朝期の風俗と一致しすぎているという事実が、研究者たちの目をごまかすことはできなかった。さらに、兄弟である足利尊氏の肖像画(伝平重盛像)とのペア構成や、奉納の経緯に関する文献史料の再発見が、直義説の信頼性を決定的なものとしたのである。

山口 彩花

山口 彩花

写真家・フォトエディター

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。

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