天文単位とは?1億5000万Kmの誤解と定義変更の真相を徹底解説
天文単位とは?1億5000万Kmの誤解と定義変更の真相を徹底解説についての真相を徹底解説します。
長年親しまれてきた「太陽と地球の平均距離」という概念を捨て去り、数値を固定せざるを得なかった背景には、物理学と天体観測技術の進歩に伴う切実な事情が存在します。天文単位の定義変更理由を紐解くと、宇宙のダイナミズムと相対性理論の壁が浮かび上がってきます。
最大の要因は、太陽自体の質量が刻一刻と失われている点にあります。太陽は中心部で起きている核融合反応によって毎秒約400万トンの質量をエネルギーに変換し、さらに太陽風としてプラズマ粒子を宇宙空間へ放出し続けています。太陽の質量が減少すると周囲の天体を引き留める重力が弱まり、軌道力学の計算上、地球の公転半径は1年間に約1.5センチメートルずつ外側へ広がってしまうのです。
さらに決定的な障害となったのが、アインシュタインの一般相対性理論がもたらす影響です。相対性理論の世界では、重力場や観測者の運動状態によって時間の進み方(時計の刻み)が異なります。旧来の定義のように「重力定数と天体の公転周期」に基づいて天文単位を算出しようとすると、地球表面で観測する時間と、太陽系の重心で計算する時間との間に無視できないズレ(座標時と固有時の差)が生じてしまう問題に科学者たちは直面しました。
火星探査機や小惑星探査機「はやぶさ2」、さらには深宇宙を目指す探査機に対し、電波ミリ秒単位のレーダー計測で数メートルの測位精度が求められる時代において、「測る場所や年代によって長さが変わるものさし」は致命的でした。この矛盾を完全に解消するため、国際天文学連合は「光速(真空中で秒速299,792,458m)が不変であるのと同様に、天文単位も固定した数値で固定する」という大英断を下したのです。