ハーンの妻・小泉セツの生涯と怪談秘話|朝ドラばけばけモデルの真実
ハーンの妻・小泉セツの生涯と怪談秘話|朝ドラばけばけモデルの真実に関する最新の話題を分かりやすく解説いたします。
小泉八雲の代表作として世界中で読み継がれる『怪談(Kwaidan: Stories and Studies of Strange Things)』の誕生において、小泉セツは単なる妻ではなく、共同創作者・リサーチャーとも呼ぶべき不可欠な存在でした。
ハーン自身は高度な日本語の読み書きが不自由であり、セツもまた英語を流暢に操ることはできませんでした。そこで二人が生み出したのが、日本語の単語を独特の文法で繋ぎ合わせる「ヘルン言葉」と呼ばれる独自の共通言語です。セツは古書や民話集を探し歩き、出雲や各地に伝わる怪談・奇談を読み解いた上で、身振り手振りを交えながらハーンの心に情景が浮かぶよう語り聞かせました。
後年にセツ自身が著した回想録『ヘルンさんの思い出(思い出の記)』には、当時の壮絶な創作風景が赤裸々に記されています。
「話をはじめますと、ヘルンさんは夢中になり、顔色が変わり、目つきが恐ろしく鋭くなりました。『雪女』や『耳なし芳一』を語るときは、まるで怪異そのものを目の前に見ているかのようでございました」
セツが情感豊かに語る日本の幽玄な世界を、ハーンは西洋近代文学の洗練された文体へと昇華させました。セツの語り口の巧みさと民俗的知見がなければ、『雪女』『耳なし芳一』『ろくろ首』といった不朽の名作群が世界文学として結実することは決してなかったと言えます。