松田聖子『風立ちぬ』制作秘話!大滝詠一と松本隆が遺した不朽の金字塔
松田聖子『風立ちぬ』制作秘話!大滝詠一と松本隆が遺した不朽の金字塔の要点を丁寧に掘り下げてご紹介します。
本作を語る上で欠かせないのが、作詞家・松本隆が仕掛けた文学的なギミックです。タイトルの元ネタとなったのは、昭和初期の作家・堀辰雄の中編小説『風立ちぬ』。さらにその根底には、フランスの詩人ポール・ヴァレリーの詩「海辺の墓地」の一節「Le vent se lève! Il faut tenter de vivre!(風立ちぬ、いざ生きめやも)」が存在します。
松本隆は、単にタイトルを借用しただけではありません。歌詞の中で描かれる「草の葉に くちづけて」「さよならを 言ったのは あなたの気まぐれですか」という情景描写は、高原のリゾート地で恋の終わりを受け止め、一人で歩き出そうとする少女の心の揺れを克明に映し出しています。
当時、アイドルポップスの主流であった「甘い恋愛賛歌」や「直情的な失恋の悲嘆」とは一線を画し、「失恋という痛切な別れを経て、人間として再生していく瞬間」を静謐な言葉で紡ぎ上げました。風という目に見えない自然現象を「運命の移ろい」のメタファーとして配置し、別れを受け入れながらも前を向く主人公の凛とした姿勢は、松田聖子自身のパブリックイメージを「無邪気な少女」から「精神的自立を果たした一人の女性」へと鮮烈にステップアップさせたのです。