ヒエログリフとは?解読の歴史と名前の書き方・50音対応を徹底解説
ヒエログリフとは?解読の歴史と名前の書き方・50音対応を徹底解説の背景について、専門知識を詳しくお届けします。
西暦394年、フィラエ島のイシス神殿に最後の碑文が刻まれて以降、キリスト教の台頭と古代信仰の衰退によってヒエログリフを読める人間は地球上から完全に姿を消しました。中世ヨーロッパでは「ヒエログリフは神秘的な象徴絵画であり、音を持たない」という誤ったオカルト的解釈が定説となり、暗黒の1400年が続いたのです。
1. ロゼッタストーンの発見と3言語の奇跡
事態が劇的に動いたのは1799年7月。ナポレオンのエジプト遠征軍に加わっていたフランス軍工兵士官ピエール=フランソワ・ブシャールが、ナイルデルタの要塞工事中に真っ黒な花崗閃緑岩の石碑を発掘しました。これが世紀の大発見、ロゼッタストーン(Rosetta Stone)です。
この石碑には、紀元前196年に即位したプトレマイオス5世を称える同一の勅令が、3つの異なる文字で刻まれていました。
- 上段:ヒエログリフ(聖刻文字)――神仏やファラオのための神聖な書体
- 中段:デモティック(民衆文字)――当時のエジプト国民が読める実務書体
- 下段:古代ギリシャ文字――プトレマイオス朝の公用語(当時の学者たちが読めた言語)
2. ジャン=フランソワ・シャンポリオンの歴史的ブレイクスルー
「ギリシャ語と同じ内容が書かれているなら、すぐに解読できる」と考えられたものの、作業は難航しました。イギリスの物理学者トマス・ヤングらが部分的な解明を進める中、決定的な真相に辿り着いたのが、10代で十数言語をマスターしたフランスの言語学者ジャン=フランソワ・シャンポリオン(Jean-François Champollion)でした。
シャンポリオンが着目したのは、ギリシャ語版に登場する「プトレマイオス(Ptolemaios)」や、フィラエ島のオベリスクに刻まれた「クレオパトラ(Cleopatra)」という王名が、いずれも楕円の枠(カルトゥーシュ)で囲まれている点でした。
彼はこれら2つの王名に含まれる共通文字(P, T, O, Lなど)の位置を厳密に比較・照合し、ヒエログリフが「文字1つ=音1つ」を表すアルファベット的性質を持つことを数学的に証明したのです。さらに、エジプト語の生きた子孫である「コプト語」の文法知識を駆使し、ギリシャ系支配者以外の純粋な古代ファラオ(ラムセスやトトメス)の名も表音文字で記されていることを特定しました。
1822年9月、シャンポリオンはパリの碑文・文芸アカデミーに宛てた有名な「ダシエ氏宛書簡」を発表。ここに、人類は1400年の時を超えて古代エジプトの生きた肉声を再び手に入れたのです。