ダム底に沈んだ幻の木工芸「我谷盆」無骨な栗材が放つ至高の美と真価

ダム底に沈んだ幻の木工芸「我谷盆」無骨な栗材が放つ至高の美と真価に関する専門家の意見を詳しく解説いたします。

石川県加賀市、山中温泉のさらに奥奥に位置した我谷(わがたに)集落。ここがまさに盆づくりの故郷であった。昭和40年代、治水と発電を目的とした我谷ダムの建設が進められ、村全体が湖底へと沈む悲運に見舞われる。住む人を失った集落とともに、代々農家の手作業として受け継がれてきた道具づくりの技術もまた、完全に断絶したかに見えた。

もともとこの地域で作られていたお盆は、鑑賞のための美術品ではなく、山仕事の合間に作られる実用的な生活道具だった。村人が裏山から切り出した生の栗材を手斧で割り、素早い手つきで丸ノミを滑らせて仕上げる。持ち運ぶ器が滑り落ちないよう、表面には荒々しい縦の鑿目(ノミメ)が彫り込まれた。生活の切実な知恵から生まれた機能美こそが、原点の魅力である。

佐々木 一輝

佐々木 一輝

ビジネス戦略アナリスト

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest