タール便とは?黒い便と臭いの正体|胃潰瘍やがんの危険度と受診目安
タール便とは?黒い便と臭いの正体|胃潰瘍やがんの危険度と受診目安についての疑問解決ガイドを徹底解説します。
タール便とは、食道、胃、十二指腸といった「上部消化管」からまとまった出血が起きた際に見られる、光沢を帯びたドロドロとした黒色便を指します。外見が道路工事で使われるコールタールに酷似していることからその名が付けられました。
なぜ赤い血液が出血しているにもかかわらず、排出される便は黒く変色するのでしょうか。その鍵を握るのが、胃から分泌される強い胃酸(塩酸)です。上部消化管で血管が破れて血液が漏れ出すと、赤血球に含まれる赤い血色素「ヘモグロビン」が胃酸と激しく反応します。この過程でヘモグロビン内の鉄分が酸化され、「ヘマチン」という黒褐色の物質へと化学変化を遂げるのです。さらに、酸化された血液が小腸や大腸を通過する間に腸内細菌の分解酵素や硫化水素と反応を繰り返し、最終的に混じり気のない漆黒の便となって排泄されます。
もう一つの決定的な特徴が、鼻を突くタール便特有の臭いです。血液が腸内細菌によって分解・腐敗するプロセスで、強烈な硫黄化合物やアミン類が発生します。医療現場の看護師や医師が一瞬でタール便と識別できるほど、生臭さと焦げたような刺激臭が混じり合った独特の異臭を放ちます。普段の便臭とは明らかに異質な悪臭を感じた場合、それは消化管内で大量の血液が腐敗しているサインに他なりません。
これに対し、大腸の後半や直腸、肛門(痔など)から出血した場合は、胃酸による酸化作用を受けないため、便に混じる血液は鮮やかな赤色(鮮血便)になります。「便が黒い=胃や十二指腸など口に近い消化管からの出血」という解剖学的な原則を覚えておくことが極めて重要です。