イニシエーションラブ最後の2行のネタバレとトリック徹底考察

イニシエーションラブ最後の2行のネタバレとトリック徹底考察の詳細解説をお届けします。専門的な知識がチェックできます。

本作の文庫版を締めくくる最後の2行は、ミステリー史上に残る切れ味を誇ります。その原文は極めてシンプルです。

「夕樹くん」
後ろから、聞き慣れた声がした。

たったこれだけの短い文が、なぜ読者の脳内をパニックに陥れるのでしょうか。その理由は、Side Bの語り手である「僕」の正体にあります。読者はSide Bを読んでいる間、静岡から東京本社へ栄転し、美貌の同僚・石丸美弥子と出会ってマユへの愛を冷めさせていく「僕」を、Side Aでダイエットに励みマユと恋人になった奥手な大学生「鈴木夕樹」のその後の姿だと信じ込まされています。

クリスマスイブの夜、東京で美弥子と過ごしていた「僕」は、激しい良心の呵責に駆られて車を走らせ、静岡にいるマユのアパートへと向かいます。雪の降るアパートの階段下で部屋を見上げていると、見知らぬ太った男がケーキを持って現れます。「僕」が不審に思い「誰だお前は」と睨みつけたその瞬間、背後から帰宅したマユが声をかけます。その呼び名こそが「夕樹くん」でした。

この一言によって、Side Bの「僕」は夕樹ではなく、まったく別の男「鈴木辰也(すずきたつや)」であったことが白日の下に晒されます。読者が「1人の男が都会に染まって変貌していく物語」と信じて疑わなかったストーリーラインは、一瞬にして「別々の2人の鈴木が、同じ女に同時に翻弄されていた物語」へと反転するのです。

伊藤 翔太

伊藤 翔太

フード&トラベルライター

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。

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