「さみしい」と「さびしい」の違いとは?感情と漢字表記の真相
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日本語の歴史において、本来のルーツにあたる語形は「さびしい」です。その起源は古代に遡り、動詞「さぶ(寂ぶ・荒ぶ)」から派生した形容詞「さぶし」が平安時代に「さびし」へと変化しました。ものの表面が古びて色あせる「錆(さび)」や、わび・さびの「寂」と同根であり、活気が失われて荒涼とした状態を指す言葉として定着した歴史を持ちます。
対する「さみしい」が登場したのは、文献上では江戸時代中期以降とされています。日常の話し言葉の中で、発音時の唇の動き(唇音)が「bi」から鼻音を伴う「mi」へと自然にスライドする「マ行化」という音変化が生じました。庶民の口語表現として広まった「さみしい」は、明治から大正、昭和の文学運動を通じて、より情感豊かな表現として市民権を獲得していきました。
現在発行されている主要な国語辞典(『広辞苑』『大辞林』『三省堂国語辞典』など)の多くは、「さみしい」の項目を引くと「『さびしい』に同じ」と解説しつつ、見出し語の親項を「さびしい」に置いています。言語の正統性という観点では「さびしい」が本流でありながらも、現代語としては双方が同等に認められた対等なバリエーションとして扱われています。