卯の花とはどんな花?ウツギの正体とおから命名の真相・花言葉を解説
卯の花とはどんな花?ウツギの正体とおから命名の真相・花言葉を解説に関する基本知識を徹底的にまとめました。今すぐチェックことができます。
日本人の多くが耳にしたことのある文部省唱歌『夏は来ぬ』(佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲、1896年公表)。その冒頭の一節は次のように歌い出される。
「卯の花の 匂う垣根に 時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて 忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ」
ここで多くの現代人が「卯の花は強い香りを放つ花なのだろうか?」という誤解を抱きがちである。しかし、ウツギの花を実際に鼻先へ近づけても、芳香は極めて微小であり、キンモクセイやクチナシのような拡散する匂いはない。
言語学的・国文学的検証によれば、この「匂う」は現代語の嗅覚刺激(オードブルやスメル)を意味する言葉ではない。古語における「にほふ(丹秀づ)」は、「鮮やかに美しく照り映える」「視覚的に光り輝くように美しい」という視覚的様態を指している。すなわち「卯の花の匂う垣根」とは、初夏の眩しい陽光を浴びて、生垣に密集した純白のウツギが目に眩しいほど鮮やかに咲き誇っている情景を活写した表現である。
この美意識は万葉の昔から一貫している。『万葉集』全4,516首のうち、卯の花を詠んだ歌は24首にのぼる。古代日本人にとって、卯の花は単なる植物ではなく、初夏の告げ鳥である「ホトトギス」と常にセットで詠まれる季節の時計であった。
「卯の花の 過ぎにし愛(は)しき 過ぎそねと 咲きたる花か 霍公鳥(ほととぎす)鳴く」(巻10・1945)
旧暦4月が「卯月」と呼ばれるのも、十二支の「卯(うさぎ)」に当てはめた表記である以前に、「卯の花が咲く月=卯花月(うのはなづき)」が約されたものとする説が最有力とされる。春の桜が散り果て、新緑が深まる中で一斉に白く輝く卯の花は、季節の転換を知らせる決定的な指標であった。