ワイングラスの脚持ちは日本だけ?プロが明かす国際マナーの真相
ワイングラスの脚持ちは日本だけ?プロが明かす国際マナーの真相について分かりやすく解説いたします。専門家の見解をお届けします。
「ワイングラスの脚を持つのは日本独自のマナーである」という言説は、SNSや一部のライフスタイル系コラムを中心に急速に広まりました。欧米の映画やドラマで俳優がグラスのボウル部分をラフに掴んで歓談するシーンが切り取られ、「本場ヨーロッパでは誰も脚など持っていない」という極端な言説へと発展した経緯があります。
だが、国際儀礼の専門家やソムリエ協会の公式見解は明確です。国家元首を招いた公式晩餐会や宮中晩餐会で適用される国際プロトコールマナーにおいて、ワイングラスは「ステム(脚)またはベース(台座付近)を持つ」ことが公式なルールとして定められています。英国王室の公式晩餐会の記録映像を確認しても、国王や各国の要人が乾杯の際にボウル部分を鷲掴みにする場面は見られません。指紋でグラスを汚さず、ワインの美しい色調を損なわない所作は、世界最高峰の社交界において不可欠な品格とみなされているからです。
では、なぜ「海外ではボウルを持つ」という言説が生まれたのでしょうか。その背景には、欧州における「日常」と「格式(フォーマル)」の混同があります。フランスやイタリアの家庭料理店(トラットリアやビストロ)では、厚手の脚なしタンブラーや素朴なグラスでデイリーワインを気兼ねなく楽しむ文化が根付いています。現地の人々が友人同士で談笑しながらボウル部分を無造作に持つ姿を目撃した旅行者や駐在員が、そのカジュアルな日常風景を「海外の正規マナー」として日本へ持ち帰ったことが、誤解の発端となりました。