神話と異界が交差する壱岐の島、聖域と映像化の熱狂を現地追跡
神話と異界が交差する壱岐の島、聖域と映像化の熱狂を現地追跡にまつわる役立つ知識を分かりやすく発信ます。
『魏志』倭人伝に記された「一支国」の首都・原の辻遺跡に立つと、三島由紀夫が描いたような濃密な古代の記憶が立ち上がってくる。邪馬台国の女王・卑弥呼が君臨した時代、この島はすでに交易と呪術の中心地だった。島内に点在する延喜式内社は二十四座。神道発祥の地とも称される壱岐の深層には、観光ブームでは決して消費し尽くせない骨太な信仰が息づいている。
だが、その祈りの場が過剰な情報化に晒されている。長崎県の文化財保護担当者も頭を抱えるのは、ソーシャルメディアの拡散によって一部のパワースポットへ観光客が殺到する現象だ。数百年ものあいだ氏子たちだけでひっそりと守られてきた鎮守の森に、突如として大型観光バスが横付けされる光景は、もはや珍しくない。聖なる領域をいかにして俗世の消費スピードから守り抜くか。島はいま、極めて繊細な舵取りを迫られている。