モチモチの木はなぜトラウマに?絵の恐怖と教科書が残した真相
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多くの大人が共有する「モチモチの木=怖い」という原体験は、小学校3年生の国語授業という、逃げ場のない教室の閉鎖空間で体験したことに端を発します。主人公の少年・豆太は、5歳になっても夜中に一人でおしっこに行けないほどの臆病者。その理由が、峠の猟師小屋のすぐ前で枝を広げる巨大な「モチモチの木」の存在でした。
当時の教科書を開いた子供たちの五感を凍りつかせたのは、物語序盤に登場する夜の情景描写です。昼間は栃の実を落としてくれる親しみやすい大木が、日が沈むと一変し、「両手を広げて突っ立っているお化け」のように豆太を見下ろします。斎藤隆介のテキストは、東北地方の厳しい山村を想起させる土着的な方言とともに、暗闇に対する子供の生々しい生理的嫌悪を容赦なくえぐり出していました。
特に読者の恐怖を煽ったのが、小屋の外にある「せっちん(雪隠=便所)」の存在です。当時はまだボットン便所が残る家庭も多く、子供たちにとって「夜中に一人で外のトイレへ行く」という行為は、日常に潜む最大のサバイバルでした。豆太の抱く切実な恐怖はフィクションではなく、自分自身の日常の暗闇と完全にシンクロしてしまったのです。