映画Casshernはなぜ酷評されたのか?映像美と衝撃ラストの真相
映画Casshernはなぜ酷評されたのか?映像美と衝撃ラストの真相の背景について、専門知識を取りまとめてご紹介します。
本作の評価を決定的に分けた最大のポイントが、常軌を逸したスケールで展開するクライマックスから結末(ラスト)に至るストーリー構成です。50年にわたる大戦を経て荒廃した東洋連邦を舞台に、遺伝子研究から生まれた新人類「新造人間」と旧人類の凄惨な生存競争が描かれます。
自らの母・東ミドリ(樋口可南子)を奪われ、人類への復讐を誓う新造人間の指導者ブライキング・ボス(唐沢寿明)。彼ら新造人間の正体は、国家の中枢によって「新造細胞の研究材料」として虐殺・解体された被差別地域の生身の人間たちでした。人類の倫理なき暴挙によって生み出された哀しき怪物がブライたちであり、彼らの蜂起は正当な報復でもありました。この時点で、観客は「どちらが悪でどちらが正義か」の判断を完全に奪われます。
最終決戦において、鉄也はブライと激突し、壮絶な死闘の末に彼を討ち果たします。しかし、勝利の余韻など一切存在しません。鉄也の前に現れた実父・東博士(寺尾聰)は、狂気にとらわれて鉄也の妻である上条ルナ(麻生久美子)を射殺。最愛の妻を失った鉄也は激昂し、実の父を殴り殺してしまいます。父殺しの罪を犯し、絶望の中で立ち尽くす鉄也のもとへ、死んだはずのルナの身体に取り憑いた新造人間の思念が歩み寄ります。
そして訪れるラストシーン。鉄也とルナは抱き合いながら、地球規模で拡散した最終兵器の閃光に呑み込まれ、肉体を消滅させます。彼らの魂は光の粒子となって宇宙へと昇華し、人類と新造人間の愚行によって焼き尽くされた地球の荒野に、ただ冷徹な静寂だけが残されます。主人公もヒロインも敵も全滅し、世界には誰一人として勝者が存在しないという、破滅的な結末です。
公開当時、この結末には「救いがなさすぎる」「難解すぎて意味が分からない」という拒絶反応が噴出しました。しかしこのラストは、互いに「正義」を振りかざして殺し合いを続ける限り、人類は自滅の道を歩むしかないという監督の徹底した終末論的警告であり、安易なハッピーエンドを許さない苛烈な反戦宣言だったのです。