田中邦衛が遺した魂『北の国から』黒板五郎の真実と不滅の名演録
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田中邦衛という役者の名を国民的なものにしたのは、フジテレビ系列で放送された不朽の名作『北の国から』であることに疑いの余地はない。脚本家・倉本聰が田中邦衛という役者の人間性を徹底的に見つめ、当て書きしたとされる黒板五郎役。電気も水道もない富良野の原野で、廃材を集めて家を建て、自然の猛威にさらされながら子どもたちを育てる父親の姿は、高度経済成長に沸く日本社会に強烈な問いを突きつけた。
「子どもがまだ食ってる途中でしょうが!」
ラーメン屋で店員に叫んだあのあまりにも有名なセリフ。言葉の端々に滲むやるせなさと子への無骨な愛情は、小手先の技術では決して生み出せないリアリズムに満ちていた。倉本聰が描く過酷な北海道の自然のなかで、田中邦衛は演技をするのではなく、まさに黒板五郎として「生きて」いた。単なる家族向けのヒューマンドラマに留まらず、日本人の原風景を映し出すドキュメントのような重みを獲得した背景には、彼の剥き出しの存在感があった。