手首を反らすとなぜ指が曲がる?テノデーシスアクションの仕組みと臨床
手首を反らすとなぜ指が曲がる?テノデーシスアクションの仕組みと臨床について押さえておきたい 理由を分かりやすい構成で解説いたします。
このテノデーシス作用の原理が医療現場で最大の価値を発揮するのが、不慮の事故や高所転落などで手足を自由に動かせなくなった頸髄損傷、とりわけ「C6頸髄損傷」のリハビリテーション領域です。
脊髄の損傷部位が第6頸髄節(C6)レベルにある場合、手指を曲げる筋肉(指屈筋群:主にC8神経支配)や手を開く筋肉(指伸筋群:主にC7神経支配)は完全に麻痺し、自分の意思でグーやパーを作る運動指令は指先に届きません。しかし、手首を反らせるための主要な筋肉である橈側手根伸筋(長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋:ECRL/ECRB)は、まさにこのC6神経によって支配されているため、奇跡的に自力での運動機能が残存します。
ここに、作業療法(OT)が介入する最大の勝機が存在します。自力で動かせる手首の背屈運動をトリガーにしてテノデーシスアクションを発動させれば、麻痺しているはずの手指に確かな把握動作を作り出すことができます。臨床の現場において、この一連の受動的把持機能の獲得は、他者への全面介助から「自力での生活動作」へと跳躍するための決定的な転換点として位置づけられています。
実際の日常生活動作(ADL)訓練では、手首を力強く反らせてスプーンやフォークの柄を指の間に挟み込み、自力で食事を摂取する動作から開始します。さらに、手首を反らしてコップをホールドし、口元へ運んで水分を補給する動作、衣服の着脱、整容、スマートフォンの操作、さらには導尿カテーテルの自己管理に至るまで、テノデーシス効果がもたらす恩恵は患者の生活再建の全域に及びます。手首が動くという事実を、指先の把持力へと変換するこのバイオメカニクスこそ、C6損傷者の自立を支える土台に他なりません。