月の海の名前はなぜ水がないのに海?命名の歴史と全一覧を徹底解明

月の海の名前はなぜ水がないのに海?命名の歴史と全一覧を徹底解明とはどのようなものなのか? 主要なファクトを丁寧に紐解いて紹介します。

ネット上の宇宙関連フォーラムやSNSで頻繁に見受けられる誤解が、「月の裏側にも表側と同じように無数の海が存在する」という思い込みです。しかし実態は正反対です。

月探査のデータが示す決定的な事実として、「月表面の海が占める面積比率」は、表側(地球を向いている面)で約31.2%に達するのに対し、裏側ではわずか約2.5%しか存在しません。裏側を捉えた衛星画像を見ると、漆黒の海原はほぼ見当たらず、高密度に重なり合うクレーター群によって埋め尽くされた「白く乾いた甲冑」のような様相を呈しています。

裏側に存在する数少ない海は、1959年にソビエト連邦の探査機「ルナ3号」が初めて撮影した「モスクワの海(Mare Moscoviense)」や「賢者の海(Mare Ingenii)」など、片手で数えられる規模に過ぎません。この極端な地質学的非対称性は、現代天文学で「月の二分性(Lunar Crustal Dichotomy)」と呼ばれる最重要研究課題の一つです。

なぜ裏側には海が生まれなかったのでしょうか。探査衛星「かぐや(SELENE)」やNASAの「GRAIL」による重力場観測の結果、以下の二つのメカニズムが解明されています。

第一に、地殻の厚みの圧倒的な差です。地球の潮汐力や初期の熱進化の影響により、月の表側の地殻の厚さが約30〜40kmであるのに対し、裏側の地殻は厚さ60〜70km以上とほぼ倍の厚みを持っています。巨大天体が衝突して盆地を形成しても、裏側では地殻が厚すぎるために地下深部の玄武岩マグマが表面まで湧き上がることができず、海を形成できませんでした。

第二に、放射性発熱元素の偏在(KREEP岩)です。カリウム(K)、希土類元素(REE)、リン(P)などの放射性元素が、なぜか表側の「嵐の大洋」や「雨の海」周辺に極端に集中して堆積していました。この内部崩壊熱が長期にわたって地下マントルを溶かし続け、表側に大量の溶岩流を供給し続けたのです。

中川 明日香

中川 明日香

ビジネス戦略アナリスト

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest