純正律とは?濁りなき奇跡の響きと平均律に隠された最大の弱点
純正律とは?濁りなき奇跡の響きと平均律に隠された最大の弱点についての疑問解決ガイドをご紹介します。
音楽理論の専門書を開くと難解な数式が並びがちですが、純正律をわかりやすく解説するならば、「二つ以上の音が鳴ったときに、波の山と谷が完全に一致して一切の濁り(うなり)が生じない状態」を指します。これを実現する決定的な要素が、音と音の周波数比の計算にあります。
音が空気の振動である以上、すべての音には1秒間に空気が振動する回数を示す「周波数(Hz)」が存在します。純正律における長三和音(いわゆるド・ミ・ソのメジャーコード)は、各音の周波数が「4 : 5 : 6」という極めて単純な整数比で構成されています。例えば、根音となる「ド」を264Hzに設定した場合、純正な「ミ」は5/4倍の330Hz、純正な「ソ」は3/2倍の396Hzとなります。
この整数比がもたらす最大の音響的特質が、「うなりなしの和音」です。周波数比が整数からわずかでもズレると、二つの音波の波形が干渉し合い、周期的な音量の強弱である「ワンワン」「ウワウワ」という唸り(うなり)が発生します。平均律で調律されたピアノで「ド・ミ・ソ」を強く伸ばして弾くと、耳を澄ませば微小な唸りが聴こえるのはこのためです。しかし、周波数が綺麗な整数比に整えられた純正律では、音波の位相が規則正しく重なり合うため、唸りが完全に消滅し、まるで一本の太い光の束になったかのような透明な響きが立ち現れます。
さらに音響物理学の観点から特筆すべきは、「差音(さおん)」の共鳴です。4:5:6の比率で鳴らされた純正和音は、周波数の引き算によって生じる結合音が基礎の倍音と完全に一致するため、楽器本来の音量以上の豊かな重低音と残響が自然発生します。これが、古くから音楽家たちが「天上の響き」「奇跡の調和」と称賛してきた純正律の真の正体です。