『行け! 稲中卓球部』が令和の今も愛される理由と古谷実の現在
『行け! 稲中卓球部』が令和の今も愛される理由と古谷実の現在にまつわる最新トピックを分かりやすく発信ます。
『行け!稲中卓球部』で第19回講談社漫画賞一般部門を受賞し、一躍トップ漫画家の仲間入りを果たした古谷実氏の現在に至る軌跡は、漫画界における極めて特異な進化論として知られています。
稲中の完結後、『僕といっしょ』『グリーンヒル』といったギャグとモラトリアムを融合させた作品を発表した古谷氏は、2001年に連載を開始した『ヒミズ』で劇的な作風転換を遂げました。ギャグを完全に封印し、日常に潜む悪意、若者の絶望と狂気、そして救いのない現実を抉り出す純文学的・サイコサスペンス路線へと舵を切ったのです。
その後も『シガテラ』『ヒメアノ〜ル』『わにとかげぎす』『ゲレゲレ』など、人間の暗部と脆さを照射する傑作を次々と世に送り出しました。一見すると『稲中』のギャグと『ヒミズ』以降のシリアス路線は対極に見えますが、「人間の愚かさ、孤独、そしてどうしようもない現実に対する諦念と愛着」という根底のテーマは完全に一貫しています。
古谷実氏が描いた稲中の前野や井沢の狂気は、形を変えて後のシリアス作品における人間の深層心理描写へと結実していったのです。