手塚治虫『火の鳥』がトラウマと呼ばれる戦慄の理由と鬱展開の深淵
手塚治虫『火の鳥』がトラウマと呼ばれる戦慄の理由と鬱展開の深淵の全体像を分かりやすくまとめてご紹介します。
数あるエピソードの中でも、特に鬱展開として名高い3つの長編を振り返ります。いずれも読後感の重さにおいて他の追随を許しません。
■ 未来編:人類滅亡とロビタの集団投身自殺
地球上の全生物が死滅し、地下都市が崩壊する中、主人公の山之辺マサトは火の鳥から不老不死の体を与えられます。彼に科された使命は、荒廃した地球で新たな生命が誕生・進化するまで「数十億年間」をたった一人で見守ることでした。孤独に耐えかねて精神を摩耗させていくマサトの描写、そして感情を持ったロボット・ロビタたちが差別と絶望の果てに崖から次々と身を投げる集団自殺シーンは、トラウマ描写の筆頭格です。
■ 復活編:ロボット・チヒロとの悲恋とロビタの誕生
事故死から最新技術で蘇生されたレオナは、脳の異常によって人間が無機質なゴミに見え、旧型作業ロボットのチヒロだけが美しい人間の女性に見えるようになります。心を通わせる一人と一機ですが、社会はそれを許さず、引き裂かれた末に二人の肉体と電子頭脳は融合され、後の「ロビタ」の原型が生まれます。人間性を失っていく恐怖と、機械の中に閉じ込められた魂の叫びが胸を締め付けます。
■ 宇宙編:牧村の最期と永遠の若返り地獄
宇宙飛行士たちが謎の死を遂げた仲間・牧村の秘密を追う本作。明らかになるのは、牧村がかつて未知の異星人を弄び、惨殺した過去でした。宇宙の罰を受けた牧村の最期は凄惨を極めます。彼は死ぬことができず、「赤ん坊から老人に成長し、再び赤ん坊へと若返る」というサイクルを肉体の激痛とともに永久に繰り返す肉塊と化します。因果応報のあまりの重さに戦慄を禁じ得ません。