アンパンマンと宿敵の真相|バイキンマンとドキンちゃんの裏設定
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魅力的な悪役コンビはどのようにして生まれたのか、やなせたかしが語った公式設定の経緯を振り返ると、創作の舞台裏における劇的な試行錯誤が浮かび上がります。
連載初期、バイキンマンは単独でアンパンマンに挑み続けていました。しかし、やなせ氏は「男一人では悪巧みのバリエーションに限界がある。物語を引っ掻き回す、魅力的で気まぐれな女性キャラクターが必要だ」と直感します。そこで名作文学『風と共に去りぬ』の主人公、スカーレット・オハラをモデルに着想されたのがドキンちゃんでした。「わがままで、欲張りで、したたか。けれどどこか憎めずチャーミング」という性格造形は、昭和から平成、令和に至るまで色褪せないヒロイン像を確立しました。
また、バイキンマンの正体とバイキン星の裏設定も見逃せません。バイキンマンは雷の鳴る嵐の夜、卵から誕生して地球へ送り込まれました。その目的は「世界中をバイキンだらけにし、アンパンマンを倒すこと」です。ここで注目すべきは、バイキンマンがアンパンマンを嫌う理由です。多くのフィクションに見られる「過去のトラウマ」や「復讐心」ではありません。やなせ氏は自著『アンパンマンの遺書』などでこう語っています。
「バイキンマンにとってアンパンマンを倒すことは、悪意というより生きる目的そのもの。ハエや蚊が人を刺すように、彼の本能に刻まれたプログラムなのだ」
食品を腐敗させる細菌(バイキン)と、清潔で温かいパン(アンパンマン)。自然界の衛生と微生物の摂理をキャラクターに落とし込んだこの構造こそ、ふたりが永遠に決着のつかない戦いを繰り広げる根源的な理由なのです。