中濃ソースとウスターの決定的な差とは?関西の謎と代用黄金比
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「関西のスーパーには中濃ソースが置かれていない」というネット上で流布する噂。この真偽を確かめるべく近畿圏の流通事情を追跡すると、完全にゼロではないものの、棚割りのシェアが東日本の10分の1未満という歴然たる格差が浮かび上がります。
東日本の量販店では、ソース売り場の主役として棚の60%以上をブルドックなどの中濃ソースが占拠します。これに対し、大阪や兵庫のスーパーでは、棚の大半を占めるのは「オリバー」「イカリ」「ヘルメス」などの地場ウスターソース、そして「オタフク」をはじめとするお好み焼き・たこ焼き専用ソースです。中濃ソースは最下段や端の方にわずか数本並んでいるに過ぎません。
この地域差の根底には、日本の社会構造の変化と食の専門分化をめぐる決定的な歴史が存在します。
中濃ソースが産声を上げたのは、東京オリンピックが開催された昭和39年(1964年)のことでした。老舗メーカーであるブルドックソースが「ウスターの辛口のキレ」と「濃厚ソースのマイルドな甘み」を融合させた新調味料として世に送り出したのが始まりです。
当時、関東を中心とした首都圏では高度経済成長に伴い、団地暮らしの台頭や核家族化が急速に進行していました。キッチンの収納スペースは限られ、共働き世帯の増加により家事の合理化が急務となっていました。そうした都市生活者のニーズに、「揚げ物にも、目玉焼きにも、炒め物にもこれ1本で対応できる万能調味料」としての中濃ソースが劇的に合致したのです。
一方、関西にはすでに強固な「粉もん文化」と「外食・プロユースの専門分化」が完成していました。お好み焼きにはドロリとした甘口のお好みソース、串カツや天ぷらには衣を重くしないサラサラの辛口ウスターソース、焼きそばにはスパイスの立った専用ブレンド――というように、用途に応じてソースを厳密に使い分けるカルチャーが家庭にも浸透していたのです。「1本で何でも済ませる」という中濃ソースの合理的アプローチは、関西の豊かな使い分け文化の前には食い込む余地がありませんでした。