『更級日記』物語への異常な執着の真相!菅原孝標女が見た光と影
『更級日記』物語への異常な執着の真相!菅原孝標女が見た光と影にまつわる役立つ知識を詳しく紐解きます。
現代のインターネット上や解説コンテンツでは、菅原孝標女を親しみを込めて「平安時代の限界オタク」「夢女子の始祖」と呼ぶ言説が多く見られます。しかし、更級日記 あらすじを最後まで追うと、本作の本質は単なる青春のオタク賛歌にとどまらないことが分かります。
彼女の人生後半は、理想と現実の残酷な乖離によって打ちのめされていきます。彼女が20代から30代を迎える頃、思い描いていた「光る君のような殿方」が現れることはなく、33歳という当時としては非常に遅い年齢で下級貴族の橘俊通(たちばなのとしみち)と結婚します。夫の地方赴任に伴う孤独、子育て、そして出仕した宮廷での人間関係の厳しさに直面する中で、彼女はかつて物語に耽溺していた時間を激しく悔やむようになります。
「若い頃、仏道に励むこともせず、ただ物語の絵空事ばかりを追い求めていたから、このような侘しい晩年を迎えることになってしまった」
彼女の回想は、夢から覚めた者が負う実存的苦痛の告白へと変貌します。晩年、夫に先立たれ、子どもたちも自立して去った侘住まいの中で、彼女はかつて自らが等閑にしてきた阿弥陀仏への信仰や極楽往生への祈りにすがるようになります。『更級日記』とは、虚構の甘美さに魅了され、その代償として現実世界に居場所を失いかけた人間の痛切な反省録でもあるのです。