黒死牟の過去と人間時代|なぜ継国巌勝は鬼へと堕ちたのか
黒死牟の過去と人間時代|なぜ継国巌勝は鬼へと堕ちたのかの見逃せないポイントを徹底的にカバーしました。
ネット上の考察やファンの間では、「黒死牟は弟を純粋に憎悪し、殺意だけで動いていた冷徹な怪物」と解釈されることがあります。しかし、物語を精密に読み解くと、その内面は極めて複雑で矛盾に満ちた愛憎劇であったことが分かります。
鬼となって数十年後、老境に達した80歳超の縁壱と再会した際、縁壱は涙を流しながら「お労しや、兄上」と言い放ちました。全盛期を過ぎたはずの老兵に一撃で首の皮一枚まで斬り込まれ、巌勝は恐怖と屈辱に震えます。しかし、縁壱はその直後、寿命を迎えて立ったまま静かに息を引き取りました。
激昂した黒死牟は弟の遺体を斬り裂きますが、その切断された胴体から転がり落ちたのは、幼少期に自分が与えたあの粗末な木彫りの笛でした。縁壱は生涯、兄を恨むどころか、その笛を兄そのものとして肌身離さず大切に持ち歩いていたのです。
黒死牟はその笛を踏み躙ることも捨て去ることもできず、着物の懐にしまい込み、討伐される最期の瞬間まで四百年以上も大切に抱き続けていました。憎くてたまらないと叫びながらも、心の最深部では弟の温もりと兄弟としての絆を誰よりも渇望していたという、黒死牟の隠された本質がここにあります。