神楽坂「紀の善」閉店の真実|抹茶ババロア名店が下した決断
神楽坂「紀の善」閉店の真実|抹茶ババロア名店が下した決断にまつわる最新トピックを分かりやすく発信ます。
多くのファンが抱く「なぜレシピを誰かに託してチェーン展開しなかったのか」という疑問には、日本の伝統甘味処が抱える深いジレンマが隠されています。
セントラルキッチン化や冷凍技術の導入によって味を均一化し、多店舗展開を行う和菓子チェーンは少なくありません。しかし、紀の善のあんこは、小豆の選別から渋切り、炊き上げの微細な火加減に至るまで、日々の湿度や小豆の水分量に合わせた職人の感覚調整に依存していました。無添加・保存料不使用を貫いていたため、日持ちはせず、百貨店や催事での販売もごく限られた範囲にとどめられていました。
「工場で作ったものを紀の善の名前で売ることはできない」という職人気質こそが、同店を神格化させた要因であると同時に、事業承継を不可能にした最大の要因でもあります。暖簾を第三者に譲渡して看板だけを残す選択肢を排したことは、消費者にとっては惜しまれる結果となりましたが、ブランドの純粋性を守り抜くという点においては極めて筋の通った判断でした。