突然の胸のチクチク痛!プレコーディアルキャッチ症候群の正体と対処法
突然の胸のチクチク痛!プレコーディアルキャッチ症候群の正体と対処法の見逃せないポイントを一挙に解説しました。
プレコーディアルキャッチ症候群は、1955年にアメリカの医師ハワード・ミラー(Howard Miller)とマリアーノ・テクシドール(Mariano Texidor)によって初めて医学文献に詳細が報告された病態です。海外では「テクシドール・ツインジ(Texidor's twinge)」とも呼ばれ、前胸部(プレコーディアル)が何かに「捕まえられた(キャッチ)」かのように締め付けられて息が止まる感覚からこの名が付けられました。
臨床現場において最も特徴的なのは、胸のチクチク・息を吸うと痛いという呼吸連動性の強い局所痛です。胸の奥深く全体が重苦しく締め付けられる心疾患の痛みとは対照的に、痛む部位は肋骨の間や心尖部付近(左乳頭の下あたり)に極めて限局しており、患者自身が「ここが痛い」と指先1本でピンポイントに指し示せるケースが大半を占めます。
痛みの強さは極めて強烈で、「息を吸い込むと鋭利なナイフで刺されたような激痛が走る」ため、患者は本能的に呼吸を浅く止めざるを得なくなります。しかし、その激痛のピークは短く、通常は30秒から1分程度、長くても3分以内には跡形もなく痛みが引いていくのが典型的なパターンです。
プレコーディアルキャッチ症候群の原因については、心筋の血流不足や心電図異常を伴わないことから、心臓自体のトラブルではありません。現代医学では、肺を包む「壁側胸膜(へきそくきょうまく)」と肋骨の内側を走行する「肋間神経」の接点において、一時的な神経の挟み込み(インピンジメント)や胸壁筋肉の微小な攣縮(スパズム)が起きている仮説が最も有力視されています。何らかの拍子に胸壁の組織が引っかかり、吸気によって肺が膨らんで胸郭が広がった瞬間に神経が強く刺激されるため、呼吸に同期した激痛が生じる構造です。