筋子といくらの決定的な違いとは?味・値段・膜と成熟度の差を解剖
筋子といくらの決定的な違いとは?味・値段・膜と成熟度の差を解剖について知っておくべき ポイントを厳選して解説いたします。
筋子といくらを隔てる境界線は、単に「ほぐしてあるかないか」という物理的な形状だけに留まりません。水産生物学および水産加工の観点から見ると、「卵巣膜(らんそうまく)の有無」と「卵の成熟度(受精膜の硬度)」という2つの決定的要因が存在します。
まず構造上の違いとして、筋子はサケやマスの卵巣そのものであり、卵全体が薄い卵巣膜と結合組織によって一房に束ねられています。一方のいくらは、その卵巣膜を人為的に破り、卵粒を一粒ずつ綺麗に分離・洗浄した状態の食品です。
しかし、どの筋子でもほぐせば極上のいくらになるわけではありません。鍵を握るのは鮭の遡上段階に伴う卵の完熟度です。
秋鮭(白鮭)は産卵のために生まれた川を目指して北太平洋から回遊してきます。オホーツク海や沿岸を遊泳している初期段階で捕獲された卵は、まだ粒が小さく皮が非常に柔らかいため、膜から無理に外そうとすると簡単に破裂してしまいます。この時期の卵は膜ごと塩漬けにする「筋子」に加工するのが最も適しています。
対照的に、河口付近まで到達し産卵直前となった秋鮭の卵は、受精に備えて卵膜(外皮)が厚く丈夫になり、卵巣膜からも自然と剥がれ落ちやすい「完熟」状態へと達します。この完熟卵を専用の網や揉み手でほぐすことで、私たちがよく知るプチッと心地よい弾力を持ついくらが誕生するのです。なお、川を完全に遡上しきった鮭の卵は皮が硬くなりすぎ、業界で「ピンポン球」と呼ばれる口当たりの悪い状態になってしまうため、いくら用には河口域で獲れる適度な完熟卵が珍重されます。