枝の黒い粒は危険?アブラムシ越冬卵の正体と春の爆発を防ぐ駆除法
枝の黒い粒は危険?アブラムシ越冬卵の正体と春の爆発を防ぐ駆除法について押さえておきたい 事実を厳選して解説いたします。
「庭木にアブラムシがつかないよう、冬のうちに株元へオルトラン粒剤をたっぷり撒いておいた」という話を園芸愛好家から頻繁に耳にします。しかし、植物保護の専門家から見れば、これは極めて非科学的であり、費用と薬剤をドブに捨てるに等しい行為です。なぜオルトランはアブラムシの卵に全く効かないのでしょうか。
オルトラン(アセフェートやクロチアニジンなど)を代表とする浸透移行性殺虫剤は、根から有効成分が吸収され、導管を通って植物全体の組織に行き渡ることで効果を発揮します。それを害虫が口針を刺して樹液とともに吸汁することで神経系が麻痺し死に至るという作用機序を持っています。しかし、冬の落葉樹は休眠状態にあり、根の吸水活動はほぼ停止しています。さらに決定的なのは、越冬卵は植物から樹液を吸っていません。硬いクチクラとワックス層に包まれた卵殻の内側で独立した胚として眠っているため、土壌にいくら浸透移行性の農薬が存在しようと、卵の中には1マイクログラムも届かないのです。
この生物学的障壁を打破する唯一の農薬が、古くから果樹園で重宝されてきたマシン油乳剤(機械油乳剤)です。マシン油は化学的な毒性で神経を冒す殺虫剤ではなく、枝全体に高濃度の油膜を均一に張り巡らせることで、卵表面にある微細な呼吸門(気門)を物理的に塞ぎ、窒息死(酸欠死)させる物理防除剤です。
効果を最大化させるためのポイントは、散布のタイミングにあります。植物が完全に眠っている1月上旬から2月中旬の厳冬期に、樹種に応じた適正倍率(通常15倍から30倍程度)で、枝の分岐部や芽の隙間から薬剤が滴り落ちるほど徹底的に散布します。3月に入り新芽がほころび始めてから散布すると、強い油膜が芽の呼吸まで阻害し、深刻な薬害(芽枯れや落葉)を引き起こすため、適期を1日たりとも逃してはなりません。