幸せの国ブータンの現在に何が?幸福度急落と若者国外流出の真相に迫る

幸せの国ブータンの現在に何が?幸福度急落と若者国外流出の真相に迫るとはどんな影響があるのか? 主要なファクトを丁寧に紐解いて紹介します。

「ブータンを愛している。家族も山も大好きだ。でも、ここにいても家を買うことも、子どもに十分な教育を受けさせることもできない」――首都ティンプーのカフェで語られた20代の大卒青年の言葉は、現地の若者が抱える共通の胸中を物語っています。

近年、ブータン国内で社会現象となっているのが若者のオーストラリア移住ブームです。行き先は西オーストラリア州パースやシドニー。ブータンでは看護師、エンジニア、学校教員、中央省庁のエリート官僚までもが相次いで退職届を提出し、学生ビザや就労ビザを取得して国を離れる事態が常態化しました。人口80万人足らずの小国から、過去数年間で2万人以上もの労働力・知的層が国外へ脱出した計算になります。

この大移動のトリガーとなった要因の一つが、スマートフォンとSNSの急速な普及です。ブータンでインターネットとテレビの利用が解禁されたのは1999年と世界で最も遅い部類でしたが、近年のモバイル端末の浸透速度は凄まじく、若者のほぼ全員がInstagramやTikTokを日常的に利用しています。

外部からの情報が遮断されていた時代、人々は身近な共同体の中で「みんな同じような暮らし」を営み、チベット仏教の教えである「足るを知る」境地に安らぎを見出していました。しかし、液晶画面の向こう側に広がる豊かな西欧社会の消費生活や、一足先に豪州へ渡った知人が新車を買い週末にビーチで過ごす様子がリアルタイムで届くようになったのです。

心理学で言う「相対的剥奪感(Relative Deprivation)」が若者たちの心に深く芽生えました。「自分たちは世界標準から取り残されているのではないか」という焦燥感が、それまで誇りであった伝統的な生活様式を「退屈で貧しい日常」へと塗り替えてしまった側面は否めません。

佐藤 大輔

佐藤 大輔

シニアコンテンツプロデューサー

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。

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