『ダンサー・イン・ザ・ダーク』なぜ最恐鬱映画?結末の真実と狂気の裏側
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』なぜ最恐鬱映画?結末の真実と狂気の裏側についての疑問解決ガイドをご紹介します。
本作の輪郭を捉える上で避けて通れないのが、緻密かつ残酷に設計されたシナリオの全貌です。物語の舞台は1964年のアメリカ・ワシントン州。チェコスロバキアからの移民であるシングルマザーのセルマは、金属プレス工場で過酷な労働に従事しながら、12歳の息子ジーンとトレーラーハウスで慎ましく暮らしていました。
セルマは遺伝性の難病によって徐々に視力を失いつつあり、その病は息子ジーンにも確実に遺伝していました。ジーンが13歳を迎える前に手術を受けさせなければ、彼もまた完全な盲目となってしまう運命にあります。セルマが生きる唯一の目的は、息子の手術費用である2,056ドル10セントを貯めることだけでした。彼女にとって唯一の心の救いは、大好きなミュージカルの世界に逃避し、工場の機械音や列車の走行音をリズムに見立てて頭の中で華麗なステップを踏むことでした。
しかし、視力の急速な悪化によって工場の機械を破損させ解雇されたセルマに、最悪の悲劇が襲いかかります。セルマが必死に隠し持っていた手術費用を、生活苦に喘ぐ隣人の警察官ビルに盗まれてしまったのです。金を返すよう懇願するセルマに対し、自暴自棄になったビルは拳銃を取り出し、「自分を撃たなければ金は返さない」と彼女に迫ります。視界がほぼ奪われた混迷の中で激しいもみ合いとなり、セルマはビルを銃撃。瀕死のビルから懇願され、泣き叫びながら彼にとどめを刺すという凄惨な事態へと発展します。
ビルの血にまみれた紙幣を回収したセルマは、自らの潔白を証明することよりも、眼科医へ息子の手術代を前払いすることを最優先しました。逮捕された後の裁判でも、セルマは頑なに沈黙を守り続けます。息子の手術費用を「共産党への送金」と誤解され、冷血な殺人犯という汚名を着せられても、ジーンの手術代が押収されることを何よりも恐れたためです。やがて下された判決は、第1級殺人による「絞首刑」でした。